岸本チーム「核小体と染色体ダイナミクス」

 真核細胞の染色体は核の中で無秩序に入り混じった状態ではなく、個々の染色体ごとに高度に区画化された「染色体テリトリー」として一定の空間配置を占めており、その相対的位置関係は染色体の活性と強い関係があることがわかってきています。転写の盛んな染色体領域は転写ファクトリーと呼ばれる、転写に必要な因子が集積した領域に集まり、効率的なmRNA産生を可能にしています。一方で不活性なヘテロクロマチン、たとえばメスにおける不活性X染色体は主に核膜近傍に局在することが知られています。

 一方、核小体は古くからリボソーム合成の場としてしられているが、近年になってそれだけでなく増殖・アポトーシス・ストレス応答その他多くの細胞応答に関わっていることが知られてきています。細胞のエネルギー消費のコントロールにおいて最も重要であるPolI系のrRNA転写の制御は核小体固有の因子によって厳密にコントロールされ、数百あるrRNA遺伝子のリピート構造の不必要な部分はヘテロクロマチン化されています。核小体近傍は核膜近傍と同様に不活性な染色体が局在することが知られており、不活性X染色体はその発見の当初から一定の割合で核小体近傍に存在することが記述されています。しかし核小体は核膜とはまったく異なる構造をとっており、膜を有しません。したがってヘテロクロマチンの核小体近傍への局在は核膜とは異なる生物学的意義を有すると考えられるが、これは明らかになっていません。

 我々のチームでは、このような染色体ダイナミクスと核小体の関係に着目し、ヘテロクロマチン化、不活性化の維持における核小体の役割に関して解明したいと考えています。